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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/村上春樹 [本/文学芸術]





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【色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/村上春樹/13年4月初版】
村上春樹の小説というと、「1Q84」以来約3年ぶりです。その間は雑文集や、アンアンのエッセイ、小澤征爾との対談本、インタビュー集などが間を埋めています。新作は「1Q84」より面白かったです。円熟度合いからいうと最高傑作かもしれません(除くエッセイやノンフィクション)。30年来のファンの立場からすると、「風の歌を聴け」が一番です。当時を思い出し、自分の感情の記憶を刺激するからかもしれませんが・・・

村上ワールド。主人公が孤独に強い、人生のポジション争いから超越している存在。ここらへんに惹かれる
のかもしれません。

仏教の四苦八苦の観点で考えてみます。

「四苦は生・老・病・死の四つの苦しみ。八苦は四苦に、
愛別離苦(親愛な者との別れの苦しみ)、
怨憎会苦(恨み憎む者に会う苦しみ)、
求不得苦(求めているものが得られない苦しみ)、
五蘊盛苦(心身を形成する五つの要素から生じる苦しみ、煩悩)
を加えたもの。」

村上春樹の作品には、二苦(怨憎会苦、求不得苦)に対してタフな主人公が多いです。孤独に強ければ人に合わせる必要がない、人と距離を置ける。サラリーマンの椅子取りゲームなんかにも参加しない。出世なんか求めてない。

出世争いで身を削ったり悔しい思いをしたり、顔も見たくない上司やライバル。ここらへんで世の多くの人は心身をすり減らしていると思います。リアルタイムでそういう目にあったりしてる人には、彼の小説は一服の清涼剤になってるのではないでしょうか。僕らもこういう生き方をしたいなぁと。

つらい立場のときに笑顔でいられる人。いつも冷静で人に頼らない人。タフだなあと思い、そういう生き方のヒントを探しながら読んでる気がします。

つらいことがあっても、人に甘えず、騒がず、冷静に、自分で解決していきたいです。難しいなぁ。自分の弱さを痛感します。


以下に心に残った部分を。

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・限定された目的は人生を簡潔にする

・思考とは髭のようなものだ。成長するまでは生えてこない。

・メンデルスゾーンとシューマンの音楽を聴き分けることができた。

・つくるの部屋にはまずまずのステレオ装置があったが、それと一緒に姉が残していったレコードといえば、バリーマニロウとペットショップボーイズくらいだった。

・才能というものは肉体と意識の強靭な集中に支えられて、初めて機能を発揮するものだ。脳味噌のどこか のネジがひとつ外れ落ちてしまえば、あるいは肉体のどこかの結線がぷつんと切れてしまえば、集中など 夜明けの露のように消えてしまう。ただの虫歯一本で、肩こりひとつで、すべての美しいビジョンと響き が、ひゅっと無に帰してしまう。人の肉体とはかくのごとく脆いものだ。

・「レクサスっていったいどういう意味なんだ?」「よく人にきかれるんだが、意味はまったくない。ただの 造語だよ。ニューヨークの広告代理店がトヨタの依頼を受けてこしらえたんだ。いかにも高級そうで、意味 ありげで、響きの良い言葉をということで。」

・事実というのは砂に埋もれた都市のようなものだ。時間が経てば経つほど砂がますます深くなっていく場合もあるし、時間の経過とともに砂が吹き払われ、その姿が明らかにされてくる場合もある。

・おれたちは人生の過程で真の自分を少しずつ発見していく。そして発見すればするほど自分を喪失していく。

・僕はなんとかそのいちばん危ない時期を乗り越えた。夜の海を一人で泳ぎ切ることもできた。僕らはそれぞれ力を尽くして、それぞれの人生を生き延びてきた。そして長い目で見れば、そのときもし違う判断をし、違う行動を選択していたとしても、いくらかの誤差はあるにせよ、ぼくらは結局今と同じようなところに落ち着いていたんじゃないのかな。

・あの素敵な時代が過ぎ去って、もう二度と戻ってこないということが。いろんな美しい可能性が、時の流れに吸い込まれて消えてしまったことが。

・冷静でいつもクールに自分のペースを守る。いや、おれは冷静でもなければ、常にクールに自分のペースを守っているわけでもない。それはただバランスの問題に過ぎない。自分の抱える重みを支点の左右に、習慣的にうまく振り分けているだけだ。他人の目には涼しげに映るかもしれない。でもそれは決して簡単な作業ではない。見た目よりは時間がかかる。そして均衡がうまくとれているからといって、支点にかかる総量が僅かでも軽くなるわけではないのだ。


・「この演奏はとても見事だけど、リストの音楽というよりはどことなく、ベートーヴェンのピアノソナタみたいな格調があるな」エリは微笑んだ。「アルフレート・ブレンデルだからね、あまり耽美的とは言えないかもしれない。でも私は気に入っている。昔からずっとこの演奏を聴いているから、耳が慣れてしまったのかもしれないけど」


⇒僕はベートーヴェンのピアノソナタはホロヴィッツ、リストはユンディリやアルゲリッチぐらいしか聴いたことがない、底の浅いリスナーです。いつも村上春樹の提示するものには、新鮮さを感じます。アルフレート・ブレンデルでリストのルマルデュペイ♪



色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/04/12
  • メディア: 単行本



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コメント 22

獏

村上ワールド 食わず嫌いで未経験です(汗)
私は根っこが天邪鬼なんでしょうなぁ・・・・(@@;))
でもdonさんの書評なら読みたくなりそうでした☆

by (2013-05-18 14:09) 

DEBDYLAN

出す度に大きなニュースとなっている最近の村上春樹の小説だけど、
僕も印象に残っていて今でも読み返すのは最初の2作なんです。
読んだ年齢と内容が合致してたからだろうけど、
とても身近に感じた2作品です。

by DEBDYLAN (2013-05-18 14:11) 

hanamura

全国(全世界)でイイと言われると、まぁいいか!という私
でも獏さんと同じです。手を付けたらドップリかな~?
by hanamura (2013-05-18 14:53) 

mignon

>>孤独に強い、人生のポジション争いから超越している存在。ここらへんに惹かれる
のかもしれない。

私もこういう人間になれたらなあとdon
さんの書評よみながら思いました。
こんなんだったらもっと別の人生だったかもしれないけど、やっぱり今の自分のままでいいか[__わーい]
by mignon (2013-05-18 16:06) 

銀狼

村上春樹の名前を聞くと思いだすのが、私の友人のこと。
彼自身も小説を書いてみた事があるのですが、
あまりにも村上さんが好き過ぎて、作風が全く同じ感じに(苦笑)
それ以来、小説家になる夢を断念したようです^^;

by 銀狼 (2013-05-18 19:18) 

seawind335

村上春樹は、初期の頃の作品は読みましたが。。。。
by seawind335 (2013-05-19 16:09) 

don

獏さんこんばんは~
結構好き嫌いが分かれる作家ですからね。
べつに獏さんが天邪鬼ではないと思いますよ[__犬]
by don (2013-05-19 18:01) 

don

DEBDYLANさんこんばんは~
ぼくも一致してました。

映画版のJ’sバーの撮影を行なったバーに、当時つきあってた
彼女としばらく通ってました。ピンボールやダーツがおいてありました。
マスターは中国人じゃなく夫婦でした。ピーナッツの殻は床に
巻き散らかさなかったけど。[__犬]
by don (2013-05-19 18:10) 

don

hanamura さんこんばんは~
そうですね、そう言われると世界でいいと言われてますね。
ノーベル文学賞のオッズがここ数年1位ですしね^^;
デビュー作から読み続けたことを、誇りにさえ思います。

一緒に成長しない場合は、まずはこの作品から入るのがいい。
ぼくはそう思います。[__犬]
by don (2013-05-19 18:17) 

don

mignon さんこんばんは~
え、女性の方でもそう思われますか。
家庭に入られてる奥さんは、ポジション争いは男の目から
見たら少ないし、女性は孤独に耐えられない、と勝手に
思っていました。

やっぱり今のままの自分でいいですよ[__犬]

by don (2013-05-19 18:55) 

don

銀狼さんこんばんは~
あ~、うつっちゃうんでしょうね。
僕もうつっちゃってますから^^;
断念したのは、残念ですねぇ[__犬]
by don (2013-05-19 18:59) 

don

seawind335 さんこんばんは~
初期は青春の香りがするんですよね。[__犬]
by don (2013-05-19 19:00) 

song4u

やはりdonさんは只者じゃない。
いや、そんなの、ぼくが言うまでもなく当たり前のことなんだけど、
殊更のように、ここにそれを書きたくなりますね。

こんな有名な本に対するコメントは、普通、やや逡巡します。
だけど、さらっと書くよね。
風のようです。どっちかと言うと、つむじ風っぽいかなあ。
いたずらっ子の目つきを感じますからね。^^
by song4u (2013-05-19 19:05) 

青山実花

読まれましたか。
お早いですね、さすがです。

何となく読まないつもりでいたのですが、
donさんのレビューを拝読して、
図書館に予約を入れました。
295番目です。
出遅れすぎですね(笑)。
by 青山実花 (2013-05-19 22:53) 

みかん

donさん、おはよーぐると。
つくる君、私も読み終えました^^

またしても、耳に吸い込まれるフレーズがたくさん、の新作でしたねー。
私は今は仕事とかをしていませんが、奥様世界の窮屈な争い?
みたいのを繰り広げている人もいて、無邪気に、距離をはかりつつ
付き合う付き合い方に心底疲れていた、ここ最近。 とっても沁みました。

つくる君のように生きられたら、と思うところですが、当分は
ぐちゃぐちゃ疲れながら、春樹氏の本やヨガで懸命に自分軸を
戻す、そんな感じになりそうです~[__ふらふら]
by みかん (2013-05-20 00:51) 

mignon


お仕事してる時はかなりロンリーでしたよ。
昼食も一人で行ってたし。
孤独が好きでフリーランスになったんですから。
でもその癖直らないんでママ友達の本音を語らない会話もそろそろ戦線離脱したいですが。
子供のためと思い参加してます。
ママ達も口には出さないけどポジション争いありますよ。
常に中心に居なきゃ嫌!とか
言動や態度で分かりますもん。

あっ素敵な書評なのに話が脱線しましたね。
ごめんなさい。
私のポリシーで子育てしていきます

by mignon (2013-05-20 08:56) 

don

song4u さん、ありがとうございます<_ _>

人は、自分の能力については40%のインフレで考え、
他人の能力は40%のデフレで考えると言います。
ただでさえ自己愛に満ちた人間なので、あまり誉めないでください^^;

おっしゃるように、ほんとは逡巡するぐらい慎重なほうが、
人生がうまくいきやすいと思います。思慮が足らないので、
よく転んでます[__犬]
by don (2013-05-20 21:33) 

don

青山実花さんこんばんは~
295番目ですか~。
ぼくの舟を編むが99番待ち、
海賊とよばれた男上が137番待ちでですが、それ以上ですね。
海賊の下巻は231番待ちです。今気づいて予約しました。
同時じゃないと、だめですね・・・

この本は3月に購入申請したので4番でした。ぼくの街には
図書館が4つほどあるので、一番最初に読ませて頂きました。
ピカピカでした[__ぴかぴか]
by don (2013-05-20 21:41) 

don

みかんさんこんばんは~

人づきあいは難しいです。とくに気を使うタイプや、
繊細な人は、受けとめちゃうんですよね。スルーすればいいのに。

ワンピースの菱形のおっさんの回りにいた、猿山連合軍のような、
アホが回りにいてくれたら、人生はもっと楽なものになるとは思うですが、
これも諸行無常で、いい時期というのは長く続きません。

結局、孤独に強くなるしかないんでしょうね。結構ブログは
孤独に強くなるツールだと思いますよ。[__犬]
by don (2013-05-20 21:51) 

don

mignon さんこんばんは~
あぁ、ママさんのほうがメンドクサイかもしれませんね。
サラリーマンは、自力勝負だけど、ママさんは自力じゃなくて、
お金や、子どもや、家柄や、トータルで張り合うような感じに
なりそうで、ややこしいです。

わずかの間なんですけどね、たった数年のつきあいだから、
ニコニコと役者を演じるのが得策かもしれません。[__犬]
(ぼくは役者になれませんが)
by don (2013-05-20 21:59) 

松本ポン太

donさんの記事で読みたくなりましたが、ハードカバーの本は持ち歩くのにかさばって重いので文庫化するまでガマンしようと思います。
by 松本ポン太 (2013-05-23 19:25) 

don

ポン太さんこんばんは~
ご無沙汰しています。お元気でしたでしょうか。
たしかに文庫本が一番読みやすい気がします[__犬]
by don (2013-05-23 22:07) 

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