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【騎士団長殺し/村上春樹】の読書感想文 [本/文学芸術]


騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/02/24
  • メディア: 単行本


【騎士団長殺し/村上春樹/17年2月初版】
「騎士団長殺し」読まれました?
また今回も、井戸、ネコ、手の込んだスパゲッティなんか出てくるのでしょうか?
主人公は悲しみを抱えた男で、不思議な女の子と出会うのでしょうか?

プロットやストーリーが好みじゃなくても、読ませてしまう不思議な作家です。

海外では村上ビンゴがウケてるそうです。
新作を読むとき、キーワードが出てくるとポチッとする。

村上春樹ビンゴ



村上春樹ビンゴ.jpg

5段目: 神秘的な女性、耳フェチ、枯れ井戸、消えた何か、つけられてる感じ
4段目: 予期せぬ電話、猫、古いジャズ音盤、都会の倦怠、超自然力
3段目: 走る、秘密の通路、(フリーブロック)、駅、過去の回想
2段目: 早熟な十代、料理、猫と話す、パラレルワールド、奇妙なSEX
1段目: キッド氏による表紙、夜の東京、変な名前、顔の無い敵、消えた猫

ウイスキとスパゲッティとクラシックレコードがない・・
さいきんはトヨタの車もよくでてくる。前作でレクサスのトリビアは面白かった。
それにしても、こういうものが作られて、世界共通のネタになる小説家は少ない。
さすがウォールストリートジャーナル曰く、「文学的ロックスター」。

英語版は日本語版の1年半後ぐらいだそうです(過去のペース)。
この7年間、情報化が進み世界は一瞬でつながるようになってしまった。
7年前なら1年半待てたけど、今の欧米ファンは待てないんじゃないかな。

むかしハリポタの新作が静山社の翻訳が遅くて、英語版買ったことがあります。
それと同時に静山社へ怒りがつのった。なんで素早い翻訳ができないんだ。
同様の事が、英語圏で起きるかもしれない。


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ハルキストは意識高い系なのか?そうじゃない


村上作品の何がいいのか。
癒されるんですよ。このまえイヤなことがありました。
世の中にはいろんな種類のイヤなことがある(笑)。

他のことで気分は晴れなかったけど、「騎士団長殺し」で癒された。
村上春樹の著作には、傷つけられることがほとんどない。そんな気がしませんか?


村上作品への批判も多い。
・ストーリーが面白くない。
・オシャレスキー粒子が濃すぎる。
・主人公が努力なしでモテる。そんなやつおれへん。だから感情移入できない。


ま、むかしからストーリーはおもしろくないですよね。
話の展開にそった、登場人物の心情の移ろいを楽しむものだし。それが純文学。


オシャレスキーか?
いや、オシャレじゃないでしょ。
ただ、酒と音楽と文学のことを、ある程度知ってないと楽しめないのも事実。
アンチの人は、そういう小道具の描写が理解できない人だと思う。
ミンガスのベースとか、アイラの味わいとか、トニー・ベネットの歌声とか。
書いてあることの3割以下しか共感できないなら、読んでいても面白くない。たぶん。


モテる主人公について。
やっぱファンタジーは必要でしょう。
西成のホルモン屋のテツでさえ、ヨシエはんは美人やった。チエも元気でかわいい。

三島由紀夫は言います。

『どんなに醜悪であろうと、
自分の真実の姿を告白して、それによって真実の姿をみとめてもらい、
あわよくば真実の姿のままで愛してもらおうなどと考えるのは、甘い考えで、
人生をなめてかかった考えです』

『相手の幻想を破ることが、恋愛において誠実であるかどうかは、非常に疑問なのであります。
’’うそ’’というものが、恋愛では一番誠実な意味を持ってくるのではないかと私は思っています』


小説もそうですよね。愛されるには嘘というかファンタジーが必要だ。
エルサレムでの「壁と卵」のスピーチで、村上春樹は以下のように述べてます。

『小説家とは、“嘘”を糸に紡いで作品にしていく人間です。
小説家が巧妙な嘘をつく、言いかえると、小説家が真実を新たな場所に移しかえ、
別の光をあて、フィクションを創り出すことによってこそ、
真実はその姿を現すのではないかと』

生身の人間は美しくない。
愛されるためには、人も小説も「真実の姿」を告白してはならない。


アンチの人にお願いしたいのは、
「ハルキスト」とか「意識高い系」とかいって、ファンを侮蔑しないでほしい。
単に共感できる部分が多くて、癒されるから、彼の著作を読んでるだけやし。


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村上春樹の目標はドストエフスキー


ところで村上春樹の目標、ご存知でしょうか?
「道のりは遠いけど、目標は偉大でダークな小説を書くことです。ドストエフスキーのように」

いや、ドストエフスキーはかんべんして欲しい。
読んでて疲れるでしょう。小説にダークさとか読みにくさを求めてない。

ちょっとタイトルから心配したんですよ。
げ!ひょっとして「罪と罰」みたいな本やったらどうしよ。長編やし。



「罪と罰」のあらすじを以下に。過去記事のコピーですが。
ざっとA4で1枚ほどにまとめてます。ご存知の方は読み飛ばしてください。

『主人公ラスコーリニコフは、
自分をほかの大勢の人々とは区別された存在(非凡人)であると考え、
その頭に描く理想的な自分と、貧しさゆえに大学を続けられなくなった実際の自分を比べて、
今の境遇から脱するために、金貸しの強欲な老婆を殺して金品を奪っても許される、
という論理を立てます。

非凡人が有害無益な者から金を奪ったとしても、それを社会のために役立てるなら、
むしろそれは有益であり正しいことであるはずだと。

ある暑い夏の夜、斧を隠し持って間借りしているアパートから金貸しの老婆の家に向かい、
さほど良心の呵責を覚えることもなしに、斧で老婆を惨殺します。

ところが犯行を終えたとたん、ラスコーリニコフは殺人の現実に苦しめられることになります。
頭では思想による「正しい殺人」を行ったはずでも、
斧で人を殺めた皮膚感覚と血のにおいからは、逃れることができません。
それと計算外に、殺人の現場にたまたま帰ってきた老婆の妹まで殺害してしまった。

混乱と苦悩の中にあって、
ラスコーリニコフの非凡人の思想と殺人哲学は容易に揺らぐことなく、
度重なる予審判事の追求からさえ、なんとか持ちこたえさせていました。
しかし、一人の貧しい少女ソーニャの生きざまを知ることで、
その考えは大きく変化し崩れてゆきます。

自分の身を売って家族の生活を支えるソーニャ。しいたげられ、さげすまれ、
憐れまれるそんざいでしかないソーニャは、ラスコーリニコフに、
「なぜ殺される他人の痛みを感じ取れないのか」
「金貸しの老婆と私たちのどこが違うというのか」
と問います。そしてラスコーリニコフのために震えながら祈る。

その魂の震えに触れてラスコーリニコフは、
過去にソーニャが自分の身を売る決意をした時に、一度自分を殺したこと。
しかし自分を完全に犠牲にすることで、よみがえったに違いないことを直感します。

そしてソーニャが他人を自分と共にある者として感じられるのは、
犠牲の痛みと復活の救いによるものであることを悟ります。

ここにおいて他人と自分を「凡人・非凡人」と区別し、
他者との共感を拒むラスコーリニコフの思想は敗れざるを得ません。
同時に、それまでソーニャのような者を救うべき対象とみていたラスコーリニコフは、
ソーニャによって救われることになったのです。

エピローグは、様々な葛藤の末に罪の十字架を背負うことを決意したラスコーリニコフが、
ソーニャから授けられた粗末な木の十字架を身につけて自首し、
金貸しの老婆とその妹を殺害した経緯をありのままに述べて最終幕を迎えます。
ラスコーリニコフは、懲役8年(シベリア送りの強制労働8年)の刑。
ソーニャは一緒に行きましょうとシベリアまでついていく』



大丈夫でした。
ダークな小説じゃなかったです。第一部は展開が読めないので相当に引き込まれる。
第二部は内面描写が続くので、エンタメ小説好きにはキツイかもしれない。




騎士団長殺しから気に入った表現


以下に「騎士団長殺し」から気に入った表現を。


「あなたはものごとを納得するのに、普通の人より時間がかかるタイプのようです。
でも、長い目で見れば、たぶん時間はあなたの側についてくれます」
ローリング・ストーンズの古い歌のタイトルみたいだ、と私は思った。
⇒この曲のタイトルがわからない人は、村上春樹は合わんでしょうね。
こんな比喩ばっかりだから、理解できないとおもしろくないし、場合によっては謎が解けない。



彼が耐えきれずに射精すると、それに合わせて彼女は異国の鳥のような声を短くあげ・・



ジャガーとプリウスとでは、
ドアの閉まる音がまったく違うことに私はあらためて感銘を受けた。
音ひとつとっても世界には実に多くの差異がある。
ダブルベースの同じ開放弦を一度だけぼんと鳴らしても、
チャーリー・ミンガスの音とレイ・ブラウンの音が確実に違って聞こえるのと同じように。



何もする気が起きないときには、人はせめてタイヤの空気圧でも測ってみるべきなのだ。



「試練は人生の仕切り直しの好機なんです。
きつければきついほど、それはあとになって役に立ちます」



「ドストエフスキーの小説には、
自分が神や通俗社会から自由な人間であることを証明したくて、
馬鹿げたことをする人間がたくさん出てくる。・・・」

「おまえは昔からなかなか馬鹿げたことをしない男だった。
いつだって筋の通ったことをしているみたいに見えた。
たまにはそういう抑制を解いた方がいいいんじゃないか?」

「金貸しのばあさんを斧で殺すとか?」

「ひとつの考え方だ」

「誠実な娼婦に恋をするとか?」

「それもなかなか悪くない」



雨田が「スウェーデンの弁当箱」と呼んでいる古いボルボのワゴン。
トナカイの死体を運ぶには便利そうな車だ。



私はブルース・スプリングスティーンの「ザ・リヴァー」をターンテーブルに載せた。
ソファに横になり、目を閉じてその音楽にしばし耳を澄ませていた。
一枚目のレコードのA面を聞き終え、レコードを裏返してB面を聴いた。
ブルース・スプリングスティーンの「ザ・リヴァー」はそういう風にして聴くべき音楽なのだと、
私はあらためて思った。
A面の「インディペンデンス・デイ」が終わったら両手でレコードをひっくり返し、
B面の冒頭に注意深く針を落とす。そして「ハングリー・ハート」が流れ出す。
もしそういうことができないようなら、
「ザ・リヴァー」というアルバムの価値はいったいどこにあるだろう?
ごく個人的な意見を言わせてもらえるなら、それはCDで続けざまに聴くアルバムではない。

・・・いずれにせよ、そのアルバムにおけるEストリート・バンドの演奏はほとんど完璧だった。
バンドが歌手を鼓舞し、歌手はバンドをインスパイアしていた。・・

・・・そして「ザ・リヴァー」の二枚目のLPをターンテーブルに載せた。
しかしソファに横になって「キャディラック・ランチ」を聴いているところで、
(僕らはみんないつかキャディラック・ランチで顔を合わせることになるんだ)
電話のベルが鳴った。




ロックファンにはおなじみの名盤「ザ・リヴァー」。
2016年音楽興行収入世界1位は、ビヨンセを抑えて、
ブルース・スプリングスティーンの「ザ・リヴァー」ツアーでした。
「ザ・リヴァー」は1980年のアルバムですが、キャデラック・ランチが好きでした。
もっといえば、ニッティ・グリッティ・ダートバンドの84年カヴァーが好きです。
NGDBは、ジャクソン・ブラウンやケニー・ロギンスを世に送り出したバンド。
NGDBバージョンで、キャデラック・ランチ♪



古いアルバムで、昨年世界で一番稼いだボス。古いのに旬。
佐野元春が「NO DAMAGE」ツアーするようなものか。それは見てみたい^^
↓試聴できます。

ザ・リバー(REMASTER)

ザ・リバー(REMASTER)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2015/07/22
  • メディア: CD



(関連記事)
【職業としての小説家/村上春樹/15年9月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2015-10-18

【図書館奇譚/村上春樹/14年11月25日初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2015-01-03

【村上春樹「かえるくん、東京を救う」英訳完全読解/NHK出版/14年7月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2014-11-04

【ラオスにいったい何があるというんですか?/村上春樹/15年11月初版】
http://donhenley.blog.so-net.ne.jp/2016-03-12


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コメント 8

ぼんぼちぼちぼち

村上春樹は読んだことないのでやすが
三島の言葉がいかにも三島らしくて笑ってしまいやした(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-03-25 21:46) 

獏

読んだことないです(@w@;)))
ハルキストですか^^)
宮本輝のファンは「テルリスト」みたいですね☆

by (2017-03-26 13:30) 

don

ぼんぼちぼちぼち さん、こんばんは~
なんていうか、ぼくのお気に入りの言葉です。
[__犬]
by don (2017-03-26 20:16) 

don

獏さん、こんにちは~
テルリスト、、なんかデンジャラスです^^;
[__犬]
by don (2017-03-26 20:18) 

DEBDYLAN

『ザ・リバー』名盤ですね!!
語りだしたら止まらなくなりそうです^^;
村上春樹の作品。
モラトリアムな僕は初期の3部作が好きです^^;

by DEBDYLAN (2017-03-27 22:31) 

みかん

donさん、おはようございます^^

早く読んでみたいです~[__るんるん]
いま、引っ越しの片付けと送別会の日々で、
アタマがうまく切り替わりませんが、
日本でゆっくり読む時間を作りたいです☆

イヤなことがあって、春樹氏の作品やエッセイを読むと
傷付けられることがなく、癒されるというの、
わかります~。 ハルキストではなく、せめて村上主義者と
呼んでほしい、と、ご本人は言っているみたいですね。 
「そういう物事の見方がある」というような[__猫]

まずはdonさんのブログ記事そのものが、
中身が濃いですので、あとでゆっくり再読しま~す!
by みかん (2017-03-28 00:11) 

don

DEBDYLANさん、こんばんは~
たしかに語りだしたら、止まらなそうですね^^;
次がウツのネブラスカですしね。
[__犬]

by don (2017-03-28 21:35) 

don

みかんさん、こんにちは~
送別会の日々ですか。うれしいような、さびしいような。
いい人たちと別れるのは、つらいですよね。
別れてせいせいする人もいるでしょうけど^^

大きく生活が変わるので、気持ちの切り替えが難しいと思いますが。
新生活のリズムをつかむまでは、無理しないように。
ゆっくりでいいと思いますよ。ゆっくりで。
[__犬]
by don (2017-03-28 21:40) 

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