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悪魔の詩/サルマンラシュディ [本/文学芸術]


悪魔の詩 上

悪魔の詩 上

  • 作者: サルマン・ラシュディ
  • 出版社/メーカー: 新泉社
  • 発売日: 1990/02
  • メディア: 単行本


【悪魔の詩/サルマンラシュディ・五十嵐一訳/90年2月初版】
ふと以下の新聞記事が目にとまり読んでみた本です。
ラシュディの新作は日本で翻訳されるのでしょうか。だれも引き受け手がないような気もしますが。。

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反イスラム小説「悪魔の詩」などを執筆しイランの元最高指導者、
ホメイニ師から「死刑宣告」を受けた英作家、サルマン・ラシュディ氏(65)が18日、
約9年間に及ぶ逃亡生活の内幕を記した新著を発表した。

新著「ジェセフ・アントン」は著者の経験に基づくもので、
偽名を使い、武装警官の警護を受け、友人や出版社のつてを頼り、
20カ所もの「隠れ家」を転々とする主人公の人生が描かれている。

ラシュディ氏は18日の新著発売を前に、英BBC放送のインタビューにこたえ、
1988年の発表後、イスラム教徒の激しい反発を買い“発禁本”に指定された「悪魔の詩」が、
「(イスラムに対する)恐怖と緊張感が高まる今日では、出版は欧米でもできなかっただろう」と語った。

120923_1204~02.JPG

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思うにぼくがまとめるより、辻原登(芥川賞、谷崎潤一郎賞、川端康成文学賞、
司馬遼太郎賞などの受賞者)の本に取り上げられてたので、そちらを要約引用します。
あらすじ含みます。
120923_1204~01.JPG

<悪魔の詩とは by辻原登>
ラシュディは1947年生まれ。
インドのムスリム出身で、イギリスに移住して英語圏の作家になった。
「悪魔の詩」は1988年に発表された。
この小説はコーランや預言者マホメットをあからさまに冒涜するものだとして、
イスラム社会の憤激を買い、各地で抗議デモや暴動が起き、イスラム各国では発禁処分になる。

イランシーア派の最高指導者ホメイニによって、ラシュディに懸賞金付きで死刑が宣告される。
懸賞金は580万ドル。この死刑判決はファトワーという宗教令。

ファトワーはそれを出した最高指導者本人しか取り消すことはできない。
1998年にホメイニは亡くなってるから永久に死刑判決は続くことになる。

この出版に関わった人はすでに40人以上が殺されている。
ラシュディ氏は今もなおイギリス政府の厳重な保護下に置かれている。

では「悪魔の詩」とはどういう作品なのか。

まず2人のインド人ムスリム(イスラム教徒)が登場する。1人は俳優、
1人はボンベイの金持ちの息子。この2人がロンドン行きの飛行機に乗る。
この飛行機が空中爆発して、ヒマラヤ上空で乗客が空中に投げ出される。
2人のムスリムはなぜかイギリスの海岸に落ちて奇跡的に助かる。

その後ロンドンで悪戦苦闘、ドタバタの物語を展開するという小説。
とても面白い小説だが、特になんらかのメッセージがあるというものではない。

問題はこの2人が空中を落下していく長い時間に妄想する内容。
この妄想の中で、コーランがからかいと批判の対象になっている。

コーランは人間の正邪、善悪を推し量るすべての基準であるから、
決してからかってはいけないし、これに反するものはジハード、つまり聖戦の対象になる。

コーランはマホメットが天使ガブリエルの伝える神の言葉を書き取ったもの。
アッラーの神がいて、天使ガブリエルがいて、マホメットがいる。

このガブリエルがアッラーの神の教えを読み聞かせているとき、
悪魔が一時天使ガブリエルの姿をとってマホメットのところに現れて、
イスラム成立起源以前の3人の女神を讃える言葉を紛れ込ませたという逸話が語られる。

ということはイスラム成立起源の前に、3人の女神がいたということになる。
このことはアラーが唯一絶対神であることを否定する意味をもつ。
アッラーの前にアッラー無しだ。ところがその前に3人の女神がいたということを、
ガブリエルに化けた悪魔がマホメットに吹き込むと言うエピソード。

これは350年前にセルバンデスがドンキホーテでやったことと似ている。
騎士道物語の背後には聖書が隠されている。

神は死んだという我々の世界では、どんな芸術でも許される。
しかし神のいる世界ではそれは許されない。たとえばイスラムの世界では。

日本では「万葉集」の時代には言霊信仰というのがあった。
言葉には霊力が宿っていて発せられた言葉の内容を実現する力がある。
だから言挙げという行為が一番忌み嫌われる。これは相手の素性を暴露して屈服させる呪文。

相手の起源を暴露して、おまえの起源はだめだ。そういう呪いの言葉。
これをやったら罰せられる。

ヤマトタケルノミコトが死ななければならなかったのは、言挙げしたから。

ラシュディの「悪魔の詩」はイスラムの起源のコーランをからかい、起源を暴き揺るがした。
たとえ小説というフィクションであっても、言葉には冒涜の力があり、傷つける力がある。怖れよ。

「悪魔の詩」の日本語版は、1990年に新泉社から刊行された。
図書館、アマゾンでは手に入るが、店頭販売ではあまり見かけない。当初から自粛されたから。

翻訳者の筑波大助教授の五十嵐一は、1991年、研究室の階段で何者かによって暗殺された。
犯人はいまだに捕まってない。


2007年ごろ、読売新聞の「ひと」欄にひとりの女性が紹介された。
その女性は群馬のある町に看護短期大学をつくった。
身体障害者の人たちにしっかり向き合うことのできる学問、実践を構造的に学べる短期大学をつくった。
そしてその人は、その大学の副学長になった。

この女性が五十嵐一氏の奥さんだった。
ご主人が殺されたときは家庭の主婦で子供を2人育てていたが、
ショックで1年ぐらいは何も考えられなかった。
その後これではいけないと思い、大学院に入りなおして医療関係の勉強をし直したという。

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おもわず背筋が伸びます…。

問題になったマハウンド(登場人物名、マホメットの悪口で犬畜生という意味もあるようだ)が、
女神(多神教)を認めてしまう2章ですが、一度は認めてしまうものの、すぐに訂正します。
山にこもって天使の声を聴くと、やっぱり神は一人しかいないと。

自分や仲間が不利益になってもかまわないという強い信念で街へ行き、
多神教はありえないと訂正宣言します。

だいたいにしてマハウンドが多神教を認めるシーンも、以下のようにどうとでもとれる表現です。

「汝らはラート、ウッザー、マナート(女神三人の名前)のことを思ったことがあるか」
「彼女達は栄誉ある鳥達で、そのとりなしこそ誠に望ましいものである」

もちろん前後の文脈はあるにしても、これのどこが多神教を認めたの?ですよね。
禅問答のような抽象的な解です。
コーランの深い知識がない一般の日本人には理解できない、読み飛ばしてしまう部分です。
ストーリーには影響ないので。

たったこれだけで。。
とくに訳者の五十嵐氏は、難解でストーリーがあちこち飛ぶ話をきっちり訳して、
解説も聡明でわかりやすい。当時44歳という年齢で無念だと。

触れてはいけない問題なのかもしれませんが、
結果的に命をかけて翻訳した五十嵐氏の最後の1冊は、多くの人に読んでもらいたい。
ぼくは単純にそう思います。

いったい神とは何なのでしょうか。



ランディ・ニューマンで「神の歌」
人類にさまざまな災難をもたらしてるのはオレなのに♪
人類はアホなことにオレを信じ続けている♪
そんなマヌケなところがオレは好きなのさ♪

(p.s.コメントによる不測の事態は自己責任で。本記事は突如削除する可能性あり)

Randy Newman - God's Song



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川島

私にとって神とは・・・※テーマ大w
依存せんでも自分の中におるんよって、様々なかたちで知らせてくれてる偉大な存在と思ってますヽ(・∀・)ノ
私は神だと名乗る方々さえ、文句も言わず観てそうですw

by 川島 (2012-09-29 11:29) 

扶侶夢

発刊された頃大変評判で、読んでみたかったのですが、ボリューム的にもしんどそうだったので見送った記憶があります。買っておけばよかったですね。
それにしても訳者・五十嵐氏のことを考えると胸が痛いです。
by 扶侶夢 (2012-09-29 12:46) 

don

川島さんこんにちは!
いい神様をお持ちですね!
川島さんは、たぶん達観されてるのでしょう。
日本人はそういう思いの人が、多いような気がします[__犬]
by don (2012-09-29 13:36) 

don

扶侶夢 さんこんにちは!
そ~なんですよ。上下巻で、さらによく全集にあるような
上下段で文字がギッシリです。しかも序文はイメージ的な
ものから入っていき、そこがまったく意味不明で面白くない。

最初訳が悪いのかとも思いましたが、原文の散文的な
イメージを出してるようです。そこを乗り越えれば引き込まれて
いきます。

何かで読むと、政府は犯人を特定したようですが、イスラム社会との
関係悪化を恐れて逮捕しなかったと…。真偽は定かではありませんが。

五十嵐氏のご冥福を祈ります。[__犬]
by don (2012-09-29 13:44) 

rtfk

こんにちは^^)
本の中身もですが昨今の宗教対立というか紛争の行方のほうが
気になってしまいます・・・永遠に和解や融和は訪れないのでしょうか?

by rtfk (2012-09-29 15:09) 

heroherosr

最近は過激なムスリムが目立っていますが、クリスチャンだってドッコイドッコイで一神教徒はやっかいですねえ。
井沢元彦さんの本を読むと、言霊信仰が現在でも続いていることが良く分かりますよ。
by heroherosr (2012-09-29 17:12) 

hanamura

仏教徒(曹洞宗)の私は、座禅(スポーツクラブのヨガ)に勤しんでます。
自己鍛錬に懸命で、他の宗教に口出しする余裕を持ちません。
それでも、「地球の歩き方」は読んでいます。う~ん問題です!
表現の自由・・・戦後の日本人が「自由」という言葉をはき違えた所に報道が拍車をかけて、今の日本人が出来上がった。ホント言葉は恐ろしいです。「只管打坐」
by hanamura (2012-09-29 18:18) 

銀狼

なんだかんだ言って、
最終的には自分を信じるしかないんだよなぁ、と思っております。
しかしながら、自分の力があまりにもないものですから、
いつも泣きを見てますが・・・;^_^A
by 銀狼 (2012-09-29 20:23) 

song4u

誤解を恐れずに言えば、こういう宗教って、すごく怖い。
畏怖の念や畏敬の念とは次元が違います。
未知なるもの、理解できないものに抱く、純然たる単純な恐怖心。

本来そうなのでしょうか、宗教って?
そんなハズは無い、絶対に違うと思うんだけど。
米国でいうところの、護身用の拳銃のようですね、この宗教って。
あくまでも自分を守ることが一番。そのために付帯的に起こる不幸な
事件事故には、「そんなの関係ねー」(無関心・無頓着)。

ぼくは仏教徒(曹洞宗)ですが、少なくとも仏教の重要なテーマは
護身用の拳銃とは明確に違うと思います。
世の中には、人を不幸にする宗教があまりにも多い気がします。
いったい何のための宗教なのか? 誰のための宗教なのか??
こういう疑問を持つこと自体、かなり不思議な気がします。
by song4u (2012-09-29 21:27) 

seawind335

本来全ての宗教は、人々の心に平和と安らぎをもたらすもののはずなのですが・・・・
by seawind335 (2012-09-30 17:41) 

don

rtfk さんこんばんは!
人間が進歩すると言うなら、いつかは解決するのでしょう。
金持ちけんかせず、といいますから、まずは豊かになれば、
かなりの紛争は減るかもしれませんね。

いつになるやら[__犬]
by don (2012-09-30 19:20) 

don

heroherosr さんこんばんは!

そうですねぇ。熱心な一神教信者はやっかいですね。
井沢さんの本は読んだことありませんが、言霊を心の底で
信じてる人は、結構多いと思います。

やっぱりネガティブな発言をすると、よくない方向に物事が
進んだりしますから[__犬]
by don (2012-09-30 19:28) 

don

hanamura さんこんばんは!
お~、ヨガ教室に行ってますか。それは素晴らしいですね。

知り合いの独身女性が、年下の男と別れて、しばらく酒びたり
になってたのですが、ヨガ教室に行くようになってから、
酒を飲まなくなりました。心なしか美人になってたし。

戦後の日本人は、WGIPで米国にこんなふうにされてしまったので、
しようがないとは思いますが…。
by don (2012-09-30 19:34) 

don

銀狼さんこんばんは!
自分を信じる、素晴らしいですね。

ぼくは結局何かに祈ってます。若い頃金縛りにあって
怖くなったときは、お経を唱えたり^^;

大事な試験の前には、ご先祖様の仏壇に祈ったり、
初詣では、神様に祈ったり。

なんでしょう、神様だったり、弘法大師だったり、ご先祖様だったり
一貫性はないですけど、なにかにすがってます[__ふらふら]
by don (2012-09-30 19:40) 

don

song4u さんこんばんは!
たしかに世の中には人を不幸にする宗教が多いですね。
聖戦とかで、戦争に行かされたり、高い壺を買わされたり…。

ま、一神教の人たちにとっては神様は怖いもので、不幸も
ふつうに受け入れるのでしょうけど。

日本人の宗教観は、現世利益の追求が一番ですから、
ぼくらを幸せにしないものは宗教じゃない。とか思っちゃいますよね。

本来の宗教とは、生きる知恵のはずです。自分が生きていく
上で、取捨選択できれば一番いいのでしょうけど、まわりが
全員その宗教ばかりだったら、抜けられないのでしょう。
むかしの日本の村社会みたいなものか[__犬]
by don (2012-09-30 19:59) 

don

seawind335 さんこんばんは!
無宗教でヨガや座禅でもしてたほうが、精神の平穏が保てそうです[__犬]
by don (2012-09-30 20:02) 

みかん

五十嵐さん、暗殺されたということですか・・・
怖い。 でも、奥さまの姿勢、ほんと背筋が伸びる思いがしますね。
ヨガで自分の心と向き合う作業は、けっこういいですよ^^
by みかん (2012-10-01 00:03) 

yukky_z

ホメイニ師、超懐かしい名前ですね~!
当時、凄い悪者って扱いでしたが、本当のところはどうだったんで
しょうかね...? 米国に嫌われると、怖いですからなぁ^^;
by yukky_z (2012-10-01 02:15) 

こっちゃん

こんにちは(*^。^*)
実はこの本探していたんですよ「悪魔の詩」
amazonでもヒットしないし、イスラム教徒の方々がなぜあそこまで過激に反応するのか?少しでもわかるかと思って。
でも記事を読ませていただき参考になりました。
実際に読んでみたいですね。
よし図書館に行こう。
by こっちゃん (2012-10-01 14:52) 

don

みかんさんこんばんは!
どん底から立ち上がる人は、ほんとにエライです。
そういえば、みかんさんはヨガ教室に行かれてるんですよね。

何も考えない(無になる)のは、なかなか難しいですよね。
すぐに考え事をしてしまい、雑念煩悩だらけです[__犬]
by don (2012-10-02 20:10) 

don

yukky_zさんこんばんは!
ホメイニ氏は、政治的判断で死刑宣告をしたみたいです。
ラシュディを悪の権化に仕立て上げ、敵を一人に絞った。
すると、他への不満や憎悪がやわらぐという。

なにか中国の反日政策みたいですね。ホメイニ氏、
なかなかの策士です[__犬]
by don (2012-10-02 20:15) 

don

こっちゃんさんこんばんは!
やっぱり今の時期、この本の事つい思い出してしまいますよね。

本は図書館で借りるのが一番いいです。本は買ってると置き場所
に困るのと、売りに行っても10円/冊ぐらいでしか売れないですから。。

by don (2012-10-02 20:21) 

香菜子先生香菜子先生

悪魔の詩事件、五十嵐一元筑波大助教授殺害事件、絶対に風化させてはならない事件です。

このような犯罪はいかなる理由があっても許されないです。

学問の自由、研究活動の自由は保障されるべきだから。
by 香菜子先生香菜子先生 (2017-10-15 15:05) 

don

香菜子先生、コメントありがとうございます。
そうですね。無念だったとおもいます。
[__犬]
by don (2017-10-15 15:43) 

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