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【風立ちぬ/堀辰雄】~書評と読書メモ [本/文学芸術]


名作旅訳文庫5 軽井沢 『風立ちぬ』堀辰雄

名作旅訳文庫5 軽井沢 『風立ちぬ』堀辰雄

  • 作者: 堀 辰雄
  • 出版社/メーカー: ジェイティビィパブリッシング
  • 発売日: 2009/12/15
  • メディア: 単行本


【風立ちぬ/堀辰雄/1936~1938年初版】
とても美しい私小説。
私小説といえば西村賢太しか思い浮かばないので、こんなにも美しいものだったのかと。
まるでセカチューのように美しい。

堀辰雄は軽井沢を愛した作家として知られています。
「風立ちぬ」のヒロイン「節子」のモデルは矢野綾子という女性です。
著者は彼女と1933年夏に軽井沢で知り合い、1934年9月に婚約。
しかし1935年12月、25歳の綾子は肺結核のため夭逝しました。

小説家だった堀辰雄は、
彼女が富士見高原療養所(サナトリウム)に入院するのに付き添います。
1935年4月に入院して12月に亡くなるまで、彼らのサナトリウムでの愛の生活は続きます。

節子には未来はなかったけど、
愛する堀に見守られた半年は、本当に幸福な日々でした。
なんていうかジョンレノンの主夫時代のような蜜月の日々です。
マジソン郡の橋じゃないけど、人生は凝縮されたキラメキがあれば、それで満足できるものかもしれません。


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こんなこというと何ですが、
娘の一瞬の幸せのために、父は大金をつぎ込んでいます。
幸せはカネで買える部分が確かにあります。

サナトリウムの6つの病棟にはグレードがあり、
二人が入院した、バルコニーや付添い人控えの間(側室)が付属した一番奥の病棟は、
最も立派なものでした。

1ヶ月の入院費が当時の「学校教員の年収」に匹敵したようです。
この巨額な入院費は、婚約者の実家・矢野家(実業家として知られていた)が出していました。

愛する娘をできる限り幸せにし、結果として文学名作にもなった。
父として救われた部分はあったと思います。綾子の短い人生にも価値があった。

何だったら松田聖子がこれをモチーフにして、歌まで歌っています。
「さよなら・・風立ちぬ 今は秋 今日から私は心の旅人」心の旅人、深い表現ですね。

伝説を超え神話になった山口百恵と友和の、ゴールデンコンビの映画も有名です。
作品がリバイバルされるたびに、人々の中で新しい綾子が形つくられる。永遠の命です。


以下に気に入った部分を。


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・それから私達はしばらくそのまま黙り合っていた。
そうすることがこういう花咲き匂うような人生をそのまま少しでも引き留めて置くことが出来でもするかのように。


・人生というものは、お前がいつもそうしているように、何もかもそれに任せ切って置いた方がいいのだ。
そうすればきっと、私達がそれを希おうなどとは思いも及ばなかったようなものまで、
私達に与えられるかもしれないのだ。


・私はときどき立ち止まって、彼女を少し先に歩かせた。
二年前の夏、ただ彼女をよく見たいばかりに、
わざと私の二三歩先に彼女を歩かせながら森の中などを散歩した頃のさまざまな小さな思い出が、
心臓をしめつけられる位に、私の裡に一ぱいに溢れて来た。


・幸福の思い出ほど幸福を妨げるものはない。



その他の読書メモを。



<最初のタイトルは「婚約」だった>
1936年、堀辰雄は立原道造にあてた手紙に、
「今日から小説やっと書き出したところ。いまのところ仮に「婚約」という題をつけている。
二人のものが、互いにどれだけ幸福にさせ合えるか、そういう主題に正面からぶつかってゆくつもりだ。」



<有名作家も入院したサナトリウム>
結核の特効薬がなかった当時、標高1000メートルの富士見高原療養所は、最適な自然環境と考えられた。
堀辰雄以外にも、竹久夢二、横溝正史など多くの作家や文化人が治療のため訪れた。




人生そのものが病室♪


さだまさし/サナトリウム♪





夢供養 プライス・ダウン・リイシュー盤

夢供養 プライス・ダウン・リイシュー盤

  • アーティスト: さだまさし,渡辺俊幸
  • 出版社/メーカー: フォア・レコード
  • 発売日: 2004/06/30
  • メディア: CD





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コメント 27

獏

こんにちは^^)
>人生は凝縮されたキラメキがあれば、それで満足
そうなのかも知れませんね。。。
でも今となっては 「あの時」がそういう時間であったかどうか
相手に聞いてみたいものですが
その勇気はありません(爆)

by 獏 (2013-07-27 12:51) 

song4u

さだまさし、いいですよね~。
生年で言えば'52年4月(佐田さん)と'54年3月(ぼく)だから、ほぼ2年違い。
でも、学年で言えば、3年違いになります。
ぼくの学生時代は、学生運動は完全に沈静化していましたが、学年で3年上
の佐田さんの時代には、まだまだ火種が残っていたかもしれません。
だからかなあ、彼はほとんど大学には行かず仕舞いだったそうですね。

もちろん、『夢供養』も大変素晴らしい作品ですが、さだまさしのアルバムで
ぼくが最も印象深いのは、1stアルバムである『帰去来』です。
『帰去来』は'76年11月のリリースらしいのですが、実際にぼくが知ったのは
社会人になった'77年の4月以降、アルバムリリースからは半年以上後のこと
('77年の夏頃)だったと思います。

当時はまだCDは登場しておらず、30cmLPレコードの時代です。
初めて聴いた瞬間、もうほとんど虜になりました。
当然のように、来る日も来る日も聴いていたのを憶えています。
少し前の井上陽水からは、ある種の戦慄のようなものを覚えましたが、
さだまさしからは陽水とはまったく異なる、知らないのに懐かしいような、
安定感・安心感のある実に不思議な感覚が伝わって来ました。

さだまさしの才能は恐るべきものだと思います。
早い話が、彼が出て来た当時、彼は周囲の誰とも似ていませんでした。
そしてそれは、既にあれからもう40年近くが経とうかと言うのに、
未だに無人の荒野を行くが如き状況が続いています。
ちょっと信じられない気がします。
(記事のテーマからやや逸脱しており、誠に申し訳ございません)
by song4u (2013-07-27 14:48) 

song4u

勘違いしてました、生年でも学年でも2年違いですね。
お詫びして訂正します。
by song4u (2013-07-27 14:59) 

haku

今 「風立ちぬ」と聞くと、 ジブリを思い浮かべてしまいます (><)
以前は勿論、百恵ちゃんと聖子ちゃんでしたが ^^;
by haku (2013-07-27 16:46) 

hanamura

donさん凄い!う~ん!百恵ちゃん!う~ん!切り口というか、入口というか、そうか!名作don訳!文庫?とりあえず、読み直さないと!(先ずソコですかね!)
by hanamura (2013-07-27 16:50) 

月夜のうずのしゅげ

堀辰雄は中学時代に
父に本をもらって読みましたが
よく分かりませんでした
ずーっとい忘れていました。
再読してみます。
by 月夜のうずのしゅげ (2013-07-27 18:02) 

銀狼

hakuさんも書かれておりますが、これから子供たちにとっては
「風立ちぬ」=ジブリになっちゃうんでしょうかね^^;

聖子の「風立ちぬ」の作詞は松本隆
彼の事ですから、この作品に感化されてあの詞に繋がったのでしょう^^
この当時の松本隆作品は聴きながら唸ってしまうほどの
秀逸な表現が本当に多いです^^
by 銀狼 (2013-07-27 19:10) 

seawind335

やっぱり凝縮された時間が出来るだけ長く続いてほしい、と願うのは贅沢なのでしょうか・・・(^_^;)
by seawind335 (2013-07-27 21:28) 

扶侶夢

私の父の初婚の妻も夭逝しました。徴兵で出征を前にしてのひとつの悲劇でもありました。
物語には様々な点で思い入る事が多いです。
by 扶侶夢 (2013-07-27 21:48) 

青山実花

「風立ちぬ」は未読です。
donさんのレビューを読ませていただいただけで、
その美しさが伝わってきます。
ケンタの作品とは対極の位置にいるようですね(笑)。
(どちらがいい、という事はないのですが)
今度読んでみます。

さだまさしさんの歌の中では、
「飛梅」が好きです。
by 青山実花 (2013-07-27 22:10) 

mignon

>>ただ彼女をよく見たいばかりに、わざと私の二三歩先に彼女を歩かせながら森の中などを散歩した

うーん女性ならこんな風に思われたら最高ですね。
今度読んでみます。


by mignon (2013-07-27 23:43) 

DEBDYLAN

僕もジブリが頭に浮かんじゃいました^^;
小説読んでないなぁ・・・

by DEBDYLAN (2013-07-28 09:50) 

heroherosr

風立ちぬは大昔に読んでいるはずですが、読んだという記憶しかありませんねえ。
私も読み直してみようかな。
by heroherosr (2013-07-28 13:20) 

don

獏さんこんばんは~
僕も聞く勇気はありません^^
知らぬが仏です。[__犬]

by don (2013-07-28 19:32) 

don

song4uさんこんばんは~
1stアルバム、ツタヤディスカスに予約しておきました。
1st、2ndがセットのものですが、結構人気でしばらく
回ってこないかも。

さだまさしは、むかしテープで数本聴いてたのと、今は
ベスト的なCDが数枚あるだけなので、レンタルで音源
増やしておこうかなと思いました。

wikiを見ると、オリジナルアルバムが37枚もある。
聴いてないのがたくさんあります^^

コアなファンではないので、語るのは憚られますが、
たぶん過去30~40年では日本最高の詩人でしょう。
同じレベルの人を、思いつきません。世界的に見ても、
ボブディラン、ランディニューマン、ジャクソンブラウン、
ブルーススプリングスティーン、ポールサイモン、JT
なんかが素晴らしい詩人とされていますが、さだまさしの
世界観の方が、僕ら日本人にはグッと来ます。そういう意味では
世界最高の詩人と言ってもいいと思います。

そういえばむかしゴルフの時上司を乗せて、さだまさしのCD
かけてたら、コスモスかなにかで、涙ぐんでました[__犬]
by don (2013-07-28 20:08) 

don

haku さんこんばんは~
だいぶストーリーは違うみたいですけど、
見に行きたいです[__犬]
by don (2013-07-28 20:10) 

don

hanamura さんありがとうございます。
僕じゃなくて、この旅訳本がすごいのです。
いろんな雑学的補足があって、楽しめる1冊になっています[__犬]
by don (2013-07-28 20:13) 

don

月夜のうずのしゅげ さんこんばんは~
いいお父さんですね。風立ちぬは美しいので、
この世界観を感じて欲しいと、思われたのでは
ないでしょうか[__犬]
by don (2013-07-28 20:16) 

don

銀狼さんこんばんは~
映画見たいなと思っています。あまり子供向け映画では
ないような作品らしいですね。

やっぱり風立ちぬは松田聖子のイメージが、一番強いです。
あの歌詞が、頭にすっと浮かんでくるので[__犬]
by don (2013-07-28 20:21) 

don

seawind335さんこんばんは~
いや、贅沢ではないでしょう。
ずっと幸せな人もいると思いますよ[__犬]
by don (2013-07-28 20:22) 

don

扶侶夢さんこんばんは~
当時は不治の病が今よりたくさんあったので、若くして、
という方も多かったのでしょう。医療の進歩は素晴らしいです。[__犬]


by don (2013-07-28 20:27) 

don

青山実花さんこんばんは~

ケンタの作品みたいなのが私小説だと思ってました^^;
ケンタファンからすると、パンチが効いてないので、物足りないかも
しれません。浮世絵(春画)と、印象派の違いみたいな感じです。

青空文庫にあるので、「青空文庫 風立ちぬ」で検索すれば
出てきます。だけど紙の文庫の方が、だんぜん読みやすいです。
やっぱり本は紙の方がいいなぁ。

「飛梅」渋いところがお好きですね。ぼくは享楽的なので、
笑いと涙のあるメジャーどころが好きです[__犬]


by don (2013-07-28 20:39) 

don

mignon さんこんばんは~
ぼくも彼女を先に歩かせて、見るのが好きでした。
結構そういう男は多いと思ったので、共感しちゃいました。

青空文庫にあるので、「青空文庫 風立ちぬ」で検索すれば
出てきます。だけど紙の文庫の方が、だんぜん読みやすいです。[__犬]
by don (2013-07-28 20:43) 

don

DEBDYLAN さんこんばんは~
100pぐらいの薄い小説です。
たまには小説もいいかもしれません[__犬]
by don (2013-07-28 20:44) 

don

heroherosr さんこんばんは~
本なんてそんなもんですね。
読んだ記憶すらない本も、たくさんあります。
再読なら、「青空文庫 風立ちぬ」で検索すれば
無料で読めます。文庫に比べて、パソコンは読みにくい
ですけど[__犬]
by don (2013-07-28 20:47) 

みかん

donさん、こんばんは^^
27日に、テキサスに帰ってきました。
日本は・・・スバラシイですね。 両親とのお別れも悲しかったですが、
また泣いたり笑ったり、日々を奮闘したいと思います!(^^)!

風立ちぬ、ジブリの映画を日本で観てきました!
ゼロ戦を設計した、堀越二郎の物語でした。 泣いてしまいましたー。
この堀辰夫さんの小説は未読です、読んでみたいデス。[__猫]
by みかん (2013-07-30 00:00) 

don

みかんさんこんばんは~
テキサスは暑いですか?
この前誰だったか忘れましたが、日本人ピッチャーが
テキサスのデーゲームで好投してました。
暑いのにすごいなぁと。

ジブリ見られましたか。ぼくも見たいなと思いつつ、
どうしようかなぁ。泣くようないい場面があるのなら、
見に行きたいです[__犬]

by don (2013-07-30 21:07) 

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