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最高の戦略教科書・孫氏/守屋淳 [本/歴史地政]






最高の戦略教科書 孫子

最高の戦略教科書 孫子

  • 作者: 守屋 淳
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2014/01/24
  • メディア: 単行本


【最高の戦略教科書・孫氏/守屋淳/14年1月初版】
ある家族の実話としてお聞きください。京大と防大に合格し、息子が防大に行った父親の苦悩です。

第一希望は小学校のときから京大でした(親の第一希望かもしれませんが)。ずっとそれできて合格圏内です。父親は息子が京大に行くことを疑わず、合格発表を心待ちにしていました。

防大は11月に試験を受けます。時期的に腕試しのつもりでした。筆記で受かると面接です。そこでの話に大変魅了されて、彼は防大に行くと言い出します。その後センターで9割とって、京大を受験します。京大は二次の配分が8割以上なので、いわば二次一発勝負です。

3月半ばの合格発表日、家族から連絡がありません。家に帰ると京大は落ちたので防大に行くと。父親は受験番号を息子から聞いて、自分で確認するということをしませんでした。

父親は必死になって息子を説得します。浪人してもう一度京大を受けるべきだと。理由はいくらでもありますが、一言でいうと、安全で幸福の確率の高い人生を歩んで欲しい。それだけです。母親は息子の決断を支持するという姿勢です。数時間におよぶ話し合いの結果、出た結論は防大進学です。厳密に言うと防大は給料をもらえるので、進学というより就職となります。

話し合いの中で、息子から言われた言葉で印象に残ってるのは、「この選択は上下じゃなくて、左右だ」。父親は偏差値で京大と防大を上下と認識しています。偏差値の高いほうが幸福の確率が高い。息子の中では、それは上下で評価されるものじゃなくなくて、同列のもので、右に行くか左に行くかの進路選択であると。

4月になり入校式が終わり、すべての進学段取りが終わった後、父親は母親から衝撃の話を聞きます。京大の某学部は第二希望まで学科が書けて、第一希望の学科は落ちたけど、第二希望の学科は合格していたと。要は希望の学科には行けないけど合格は合格です。なぜ。。。父親は天を仰ぎます。

息子との話し合いの中では、彼は京大に行って、研究室に入って、その後大手企業の中央研究所のようなところで働くことに魅力を感じないと。父親は自分のサラリーマン人生を否定されたような気がします。たしかに面白くはない。だけど人並みの給料を貰って、幸せで平穏な人生を歩んできた。この幸せというのを息子に理解させることができないというのは、やっぱり横で見ていて楽しそうに見えない、自分の振る舞いに問題があったのだと。自業自得なのか。

ご存知かもしれませんが、防大というのは大変に厳しい学校です。卒業するのが難しい。まず最初は10人部屋です。1年の夏には東京湾を8キロ遠泳します。もちろん先輩からの指導は一般人の想像を超えます。これは冷静に考えれば当たり前の事かもしれません。防大卒業後に1年間士官学校に行き、その後はいきなり少尉(旧称)になり、30名ほどを率いることになります。相当に鍛えられてないと単純にやっていけません。だから理不尽に見える先輩からの指導は、来るべき時への備えのためです。ましてや有事となれば。。
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国を守るという崇高な理念と、あえて厳しい茨の道を選んだ息子の選択を、父親としては認めざるを得ません。楽な道を選ばそうとした自分が間違っているのかもしれません。しかし。。。

仮に耐え切れず戻ってきた場合にも、そこでの経験は一生の財産になるとそう思いたい。
「若いうちに数回失敗することは、非常に有益である」 byトーマス・ヘンリー・ハックスレー

ふとこの本を読みながら、僕はこの話を思い出しました。その父親は、息子に本書を贈ろうとしてるようです。いろいろと考えた結果、この本が最良と判断したと。


以下に読書メモを。

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<死者数と戦争の頻度>
イギリスの物理学者ルイス・リチャードソンは、ある規模の戦争がどれだけの頻度で発生したかグラフにし、そこに非常に単純なべき乗則が成り立っていることを発見した。死者数が2倍になるたびに戦争の頻度が4分の1になることを見出した。



<卓越した理論家は名将ではない>
孫子の兵法の作者と言われる孫武。彼の仕えた呉は結局滅ぼされている。「呉越同舟」で有名な、呉と越の実戦で敗北した。呉軍は散々に討ち破られ、呉の王はこのときの矢傷が元で亡くなった。そのさい息子の夫差に仇討ちを遺言。これがきっかけで「臥薪嘗胆」が始まる。

欧米における戦略論のバイブルと呼ばれる「戦争論」の著者クラウゼヴィッツは、ナポレオンに敗れ捕虜になっている。卓越した理論家が必ずしも連戦連勝の名将ではないことは、注目すべき事実だ。



<孫氏とクラウゼヴィッツの対比>
クラウゼヴィッツ:重心(急所)の打倒にひたすら専念しておけ、というのが「戦争論」
孫武:じわじわ弱らせてから料理しろ、というのが「孫氏」



<戦争全体の重心とは何か>byクラウゼヴィッツ
1.敵国で主として軍隊が重心を成している場合には、軍を撃滅する。
2.首都が単に国家権力の中枢であるばかりでなく、政治団体や政党の所在地である場合には、首都を攻略する。
3.敵の最も重要な同盟国が敵よりも有力な場合は、この同盟国に有効な打撃を加える。



<円環する歴史>
戦いや競争が激しくなる時期と、緩和される時期は円環する。戦国時代は天下統一の夢が見れた。しかし天下をとる夢が続くと、社会は安定しない。ではどうするか。このために導入したのが「封建的身分制度」。武士の子は武士。商人の子は商人と身分や職業の世襲を基本とした。この場合、夢は見られないが生活はできる。

「身分制」は大昔の愚かな制度と言えるのか。そうとは言い切れない。インドでは、実質的にカースト制度がいまだに続いている。日本人からいわせれば酷い身分制度にしか見えないが、一方ではカーストには職業区分の確立という意味がある。細かい世襲の職業区分を作り、それ以外の仕事はお互い手を出せない体制を作ることで、あれだけ膨大な人口をまんべんなく食べさせている。

一見不合理や愚かしく見えることも、じつは深く理由を探ると意味が見えてくることがある。そうでなければその制度が何千年も続くことなどあり得ないのだ。



彼の人生が今後どうなるかは、誰にもわかりません。ただ健康で悔いのない一生を過ごして欲しい。
彼の船出を祝って、長渕剛で乾杯♪ 航空自衛隊の隊員激励ライブから。



長渕 剛 1978年~1981年

長渕 剛 1978年~1981年

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1985/12/21
  • メディア: CD



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コメント 12

獏

数年先に 獏は正にそういった苦悩を抱えるやも知れません
(悩むレベルは相当違うと思いますが・・・汗)
しかしまっとうな価値判断と冷静な考え方で
自分の身の振り方をジャッジできるような方向に
向かうことが出来るようになってほしいと願っています


by 獏 (2014-04-16 06:13) 

vega

高校2年の時、左右どちらを選ぶか…
という人生の大きな選択がありました。

留学するか、日本に残るか…。
家族は呆れましたが、留学を断りました。
親も姉も、今もその本当の理由を知りません。
留学していれば、もっと良い会社に勤めていたのかもしれない。
けれども、あの時の選択は間違っていなかったと思っています。
あの時の選択があったから、今最高の人生を送っているので…。
by vega (2014-04-16 20:11) 

song4u

鶏口となるも、牛後となるなかれ。

やや本題から逸脱するかもしれませんが、高校時代の恩師、N先生が
よくクチにされていたのがこの言葉でした。
実力ギリギリの所への進学はやめたほうが良い。それよりもワンランク
落として、ノビノビと羽ばたいて欲しい・・・
我が恩師の先生は、そう仰っていました。

その後、どんなに偏差値の高い学校でも必ず落ちこぼれ(A)がいること、
逆に、やや劣る学校でもトップクラス(B)は優秀であることを知りました。
面白いですよね。入った時の学力は圧倒的に A>B だったはずなのに、
ほんの数か月間で、いとも簡単に逆転現象が起こってしまうなんて。
やはり人間は精神の生き物、モチベーションが如何に重要であるかを
思い知った気がしました。

さて、本題です。
京大と防大・・・どちらのほうが幸せに近いのか?
その他の条件がすべて同じなら、ぼくも京大のほうが近いと思います。
しかし、この場合に限れば、その差は無視できるほど微々たるものでは
ないでしょうか? むしろそれよりも百倍も千倍も大きくて重要なのは、
何を差し置いても本人のモチベーション以外にはありますまい。

目的意識薄く、何となく漫然と親が望む京大に行くのか?
例え一時的であったにせよ、湧き上がる想いを胸に防大に行くのか?

大小取り混ぜて、人生で度々出くわす分水嶺のひとつでしょうか。
だけどこの差はあまりにも絶大で、ぼくにはほとんど決定的に思えます。
そもそも大学には、何のために、誰のために行くのでしょう?
鶏口と牛後の差・・・どころの話ではないかもしれません。
by song4u (2014-04-16 21:43) 

銀狼

確かに偏差値で上下を決めてしまいがちですが、
大学ともなると社会人の入口ともなるわけですから、
数字から受ける印象よりも、ご本人がどのベクトルに向かっていきたいのか
これが一番の要素になるんでしょうね。。。
茨の道なのかも知れませんが、実りある選択である事を
願わずにいられません。
by 銀狼 (2014-04-17 11:44) 

川島

上下ではなく左右・・・
とてもよいお話です。
書評もお陰様で勉強になりました。
ありがとうございます^^
by 川島 (2014-04-17 14:41) 

heroherosr

プロ市民さんを除けば今の自衛隊は国民の信頼を得ていますからね、防大→自衛官というのは茨の道かもしれませんが良い選択だと思いますよ。
この国の政治家、国民にいざというときの度胸なんてありませんから有事もないでしょう。
身分制度はどんな理由があっても肯定できないなあ、インドでは職業区分の確立という意味があったとしても、レイプ被害が多いというのはカースト制度があるが故でしょう。

by heroherosr (2014-04-17 20:31) 

don

獏さんこんばんは~
子どもの人生ですが、昔に比べてだいぶ親が絡むように
なっています。奥さん曰く、「昔とは違う」そうです。
よそのお父さんはもっと子育てに絡んでいると、日々
奥さんから指導を受けています^^;
by don (2014-04-18 22:53) 

don

vegaさんこんばんは~
今を肯定できるのは幸せですよね。
それにしても留学を断るのは凄いですね。ぼくらの年代は
留学への憧れがありました。

それにしても人生とは、選択の連続ですね。
by don (2014-04-18 22:53) 

don

song4uさんこんばんは~
鶏口牛後≒2・6・2の法則ですよね。

たしかに学力だけから言えば鶏口になるのでしょうけど、
体力や生活規律や、他に気を使うべき要素が多すぎます。
他の要素が牛後なら、全体評価として牛後になる可能性も
あります。

>この差はあまりにも絶大で、ぼくにはほとんど決定的に思えます。
そうなんですよね、全く道が分かれる。通常の大学という括りなら、
たとえば旧帝+αや早慶という集団に入ってしまえば、とくに文系なら、
もう一度道が交わる可能性が高いです。ある意味リカバリーできます。
しかしこの道は、辞めない限り戻ってこれない。

>そもそも大学には、何のために、誰のために行くのでしょう?
もちろん本人の為、そこからすると本人の希望通りがいいのでしょう。
しかし親は本人の適正がなんとなくわかる。失敗する確率が高そう
であれば、別の道を示唆するのが親心だと思います。

いつもながら、深い考察のご意見、ありがとうございます。
by don (2014-04-18 22:53) 

don

銀狼さんこんにちは~
将来なりたい職種がなければ、偏差値の高い大学に行き、その間に
考えればいいのでしょう。しかし成りたい職業が見つかった場合は、
18歳でその道を目指すことになる。

こういう損得抜きの、大人から見れば無謀な選択は、応援せざるを
えません。もったいない、は禁句なのでしょう。
by don (2014-04-18 22:54) 

don

川島さんこんばんは~
親の思いが重いにならないように、子には過度な期待は
かけないようにしたいですね。

こちらこそ、ありがとうございます。<_ _>
by don (2014-04-18 22:58) 

don

heroherosrさんこんばんは~
どうも今の時代、公務員としての自衛官が確立されてるようです。
ぼくらの就活時代と様相が変わってきています。有事もたしかに
起こらない確率の方が高そうです。とはいえ親の世代の価値観
からすると、もったいない進路選択だなぁと。

身分制度はぼくも肯定できません。ただこの本の視点が新鮮でした。
そういう考え方もあるのだなあと。インドはどうあるべきなのでしょうか。
by don (2014-04-18 22:58) 

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